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感動の再会に浸る間も無く、私が病院から戻ってきたことを聞きつけたスタッフさんが楽屋に顔を出し、すぐに事件が起こった現場に来るようにと呼ばれた。

足早に楽屋があるエリアを抜け、再び収録スタジオの集まるエリアに移動する。
廊下を突き当たりまで歩き、関係者用の出入り口を抜けると、そこで私たちを待っていたのは、通報を受けて駆けつけた警察官数名と生放送を担当していた局側のプロデューサーを含めた上席と思われる男性数名、それから対応に当たっていたテレビ局側の警備員だった。
こちらに気が付いた集団が一斉にこちらを向く。


「お待たせしました」
「いえ、とんでもないです」

屈強な男性陣。
田ノ上さんが先陣を切って声を発してくれなければ、私はその場で硬直していたに違いない。

身長なら私だって負けてないが、警察、スタッフ、警備員とそれぞれに、独特な威圧感があるせいで、この場所に異様な緊張感が漂っていた。

その中でも特に目を引いたのは、皺ひとつないスーツをビシッと着こなし、どう見ても現場スタッフには見えない男性数名──おそらくこのテレビ局の偉い人たちだ。
初対面ながら、私のような立場の人間がそう簡単に会えるような役職の人たちではないことだけは分かる。

そんな人たちから神妙な面持ちで出迎えられ、無意識のうちに顔が引き攣った。
かと思えば、向こうが真一文字に結んでいた口元をさらに引き締め、全員で深々と一礼してきたではないか。
その勢いの良さに、ヒッ、と声が漏れそうになったのを慌てて飲み込んだ。

こんなとき、どうすればいいんすか。

私は咄嗟に田ノ上さんに目で訴えかけた。

田ノ上さんもそれに気が付いたようで、「任せといて」と視線で宥められる。
戸惑う私を助けるように田ノ上さんが間に入り、双方で事務的な挨拶が交わされるのをただ眺めていることしかできない。

すると横からぬっと顔を覗かせた四十代くらいの覇気のない顔をした警察官に「お体の具合はいかがですか?」とぼんやり聞かれたので、やや驚きながらも「大丈夫です」と伝えた。

警官は「それは何よりです」と興味なさそうに相槌を打つと「では、時間も時間なのでさっさとやっちゃいますか」と私に向けてなのか、それとも独り言なのかも分からない言葉をぼやいた。

「西澤くん」とその人が黒いバインダーを携えた別の若い警察官に声を掛ける。
そこからすぐに、この警察官主導のもと、現場検証と事情聴取が始まった。

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作者名:泥濘 | 作成日時:2024年4月16日 12時

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