夕焼けの照らす先は、 ページ14
康二side
“…あんた、ほんまにあたしにそっくりね”
鮮明に覚えてる記憶の中で、幼いながらにその言葉の意味を飲み込めずにいた。
大好きな母親。
夢の中の母親はいつだって笑ってて、俺の名前を呼んで、抱きしめてくれて。
けど。
夢から覚めるといつも不機嫌で、笑いかけてなんてくれなくて。
それでもいつかきっと、あんなふうに笑いかけてくれるはずだと信じてた。
俺の隣に潜り込んだ蓮。
その思いは痛いほど伝わっていて、そんな優しさを俺に向けてくれる蓮が大切で、愛おしくて仕方なくて。
亮ちゃんのことも蓮のことも、羨ましいと思ったことなんて一度もない。
ただ純粋に、愛されてる2人が誇らしかった。
パパは僕に、康二は優しいな、って言う。
蓮は僕のことが好きだと言って、亮ちゃんは僕が大事だと言った。
僕は決して優しいわけじゃない。
家族が好きなだけ。
いつだって大好きな人たちが優しさをくれるから、俺もそんなふうに優しさを返したいだけ。
パパがすき。
俺の弱さも情けないところも全部、受け止めてくれるから。
蓮がすき。
いつだって対等でいてくれるから。
亮ちゃんがすき。
俺に優しさをくれて、自分が好きになれない僕まで大切にしてくれるから。
亮「康二」
まだ少し濡れてる髪。
隙間から見えるその目は、酷く優しかった。
「…ありがとう、」
亮「え？」
「俺のため、なんよな。全部全部、俺のため。やけど、ごめんね」
ごめんね。
そこまでして怒ってくれたのに。
蓮「…何がごめんなの」
怒ったような蓮の声。
きっと、俺を大事にしてくれてるからこその言葉。
「…俺な、好きやったんよ、」
好きだったんだ。
あんな母親、と言われてしまうような人だったけど。
「5人でおるの、ほんまに好きやった、」
5人だけの空間が好きで、唯一俺に笑いかけてくれるあの時間が好きだった。
失くしたくなくて、かけがえのないもので。
間違いなく、宝物だった。
「…ママのこと嫌いになるなんて、そんなん無理なんよ、」
ぼろりと溢れた雫。
俺だけじゃない、亮ちゃんも泣いていた。
ぎゅう、と抱きしめてくれる蓮も、震えていた。
きっと、ここにいるみんな、“あの時間”を綺麗なもののまんま、抱えて持っていたかったのだと思う。
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鯱(プロフ) - 苺みるくラテさん» ありがとうございます…！！ (12月23日 17時) (
レス) id: 621b904b7b (このIDを非表示/違反報告)
苺みるくラテ(プロフ) - 更新楽しみにしてます！ (12月18日 1時) (レス) id: 00ab994726 (このIDを非表示/違反報告)
鯱(プロフ) - いちごさん» ありがとうございます！これからもお付き合いください！ (9月13日 4時) (レス) id: 621b904b7b (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - コメント失礼します！凄く素敵なお話で、読みながら泣いてしまいました笑読みやすくて、これからどうなっちゃうの？！といつもドキドキしてます😵💫💗続きが楽しみです！無理せず頑張ってください！！応援してます(><)♡ (9月11日 8時) (レス) id: 9574711b70 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鯱 | 作成日時：2023年9月2日 23時
