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照side
「もう一度会いたい。話がしたい。」
そう言い出したのは、康二だった。
昨日まで、あいつに怯えて自分を見失ってしまうほどだったのに。
瞼を腫らした息子3人のその言葉を、拒否することはできなかった。
「いいか、パパが限界だって判断したらすぐに帰るからな」
亮「…わかってる」
あの日から一週間。
約束の場所は、彼女とよく来た場所。
付き合っていたころ、よくここで何でもない話をしていた。
彼女を待つその間、康二は深呼吸を繰り返し、蓮はそんな康二を支えるように寄り添っていた。
「ひかる」
やわらかい彼女の声がした。
俺がよく知る、大好きだった彼女の声。
元妻「…おまたせ」
派手なメイクも、高すぎるヒールもない。
あの頃のように素朴できれいな彼女だった。
蓮「…まま、?」
亮「ママ、だ、、」
一週間前の姿が嘘のように、亮平たちが好きだったころの母親とおんなじ姿。
蓮も亮平も、驚きを隠せず動揺していた。
「…」
元妻「…ごめんなさい、康二」
2人に声をかける前に、亮平と蓮の少し後ろにいた康二をまっすぐ見つめ、頭を下げた。
元妻「…自分と似てる、なんてそんなの言い訳で、誰かのせいにしないと心を保てなかったの。ママが弱かっただけなのに、亮平と蓮よりちょっぴり甘えん坊で手がかかったあなたに強く当たっていい理由になんてならないこと、ほんとは誰よりもわかってたのよ、」
ごめんなさい、そう繰り返して泣きながら謝る彼女。
そう、俺の知る彼女はこうだった。
素直で、まっすぐで。人の痛みがわかる人だった。
誰かのために泣くような、そんな優しい人だったのだ。
元妻「自分がコントロールできなくて、康二にあたってしまうことが当たり前になって。そんな状況がおかしいってだんだん思わなくなって…」
元妻「亮平も蓮も康二も大切で宝物だったはずなのに、気づいたら私が全部壊して、4人の日常を奪ってしまった。謝っても許されるようなことじゃない。本当に、本当にごめんなさい」
“…この子らがかわいくないって思うときがある、”
やつれた顔でそう言った彼女に、俺は何て言った?
きっと追い詰めて、彼女を壊したのは環境だけじゃない。
SOSを出した彼女に気づけなかったのは俺で、音を立てて壊れていった家庭を彼女のせいにして。
俺は何も知らず楽なほうに逃げて被害者ヅラしていた加害者なのかもしれない。
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鯱(プロフ) - 苺みるくラテさん» ありがとうございます…!! (12月23日 17時) (レス) id: 621b904b7b (このIDを非表示/違反報告)
苺みるくラテ(プロフ) - 更新楽しみにしてます! (12月18日 1時) (レス) id: 00ab994726 (このIDを非表示/違反報告)
鯱(プロフ) - いちごさん» ありがとうございます!これからもお付き合いください! (9月13日 4時) (レス) id: 621b904b7b (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - コメント失礼します!凄く素敵なお話で、読みながら泣いてしまいました笑読みやすくて、これからどうなっちゃうの?!といつもドキドキしてます😵💫💗続きが楽しみです!無理せず頑張ってください!!応援してます(><)♡ (9月11日 8時) (レス) id: 9574711b70 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鯱 | 作成日時:2023年9月2日 23時