勇気の一歩 ページ5
照side
蓮「会わせて!!」
俺が家を出ようと靴を履いた時、ぐん、と俺のシャツを掴んで抗議する蓮。昨日一日中この言葉を繰り返していて流石に辰哉も困り顔。
正義感に駆られた10歳の子を、簡単にあいつに会わせていいものなのかと一晩考えたけど、俺の答えは変わらなかった。
「蓮、いい子で待ってて」
蓮「やだ!」
「ちょ、服破れるから」
蓮「俺も知りたい!!興味ないフリはもうできないもん!!」
きゃんきゃんと吠え、家中に響いた蓮の声に、翔太と涼太が顔を覗かせた。
涼「連れてってあげなよ」
「そんな簡単な話じゃないんだよ。まず俺が会って話さないと、」
翔「蓮が知りたがってるなら教えるべきだと思うけどね」
辰「2人とも、照に任せよう。蓮もこっちおいで」
辰哉が引き剥がそうと蓮に触れるけど、そんなのお構いなしに俺にしがみついて離れない。
蓮にもきちんと教えておかないといけない。
でも蓮が知るには刺激が強い気がして、それなら今は康二のそばにいて欲しい。
蓮のまっすぐさだけが、今の康二が受け入れられる唯一のことだから。
亮「…パパ、」
「ちょうどよかった、亮平、蓮連れてって」
亮「……連れてってあげればいいじゃん」
大介に寄り添われた亮平まで登場して、俯いたままそう放つ。何を言ってるんだ、亮平まで。
「ママのこと知ってる亮平なら、俺の気持ちわかるでしょ」
亮「わかる、けど、蓮は知りたいだけじゃないよ」
「…なに、」
亮「蓮は、“当事者”になりたいだけだよ、」
ね?と蓮の頭を撫でた。
……当事者、?
大「…家族なのに、自分だけ知らず除け者にされるなんて苦しいよ」
辰「大介?」
大「蓮くんはずっと気づかないふりをしてただけ。誰も言わないから、触れないから。みんなが言わないならいっかって。でも今は状況が違うじゃん」
翔「蓮だって覚えてることあるだろうし。俺らは事情よく知らないままでもいいけど、蓮は違うだろ」
涼「向き合うなら、今なんじゃないかな。康二も含めて、ね」
ハッとして顔を上げれば、ブランケットを握り締めたままの康二が部屋から出てきていた。
まっすぐと俺を見つめる目は少し赤くて。
康「……もう、終わりにしたい」
ほんの小さな声で、俺に訴えた。
そうだ、もう終わらせなきゃいけない。
康二が苦しむのも、蓮が知らないフリをするのも、亮平が抱えてるものも。
絡みついたままの蓮の手を、ぎゅっと握った。
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鯱(プロフ) - 苺みるくラテさん» ありがとうございます…!! (12月23日 17時) (レス) id: 621b904b7b (このIDを非表示/違反報告)
苺みるくラテ(プロフ) - 更新楽しみにしてます! (12月18日 1時) (レス) id: 00ab994726 (このIDを非表示/違反報告)
鯱(プロフ) - いちごさん» ありがとうございます!これからもお付き合いください! (9月13日 4時) (レス) id: 621b904b7b (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - コメント失礼します!凄く素敵なお話で、読みながら泣いてしまいました笑読みやすくて、これからどうなっちゃうの?!といつもドキドキしてます😵💫💗続きが楽しみです!無理せず頑張ってください!!応援してます(><)♡ (9月11日 8時) (レス) id: 9574711b70 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鯱 | 作成日時:2023年9月2日 23時