side WATANABE ページ27
コロナの脅威が迫ってきていて、
世間では人と距離を取るようになんて
言われ始めてきてるけど。
それでも今、Aのところには行かないといけない、
そう思った。
考えることもなく足がAの自宅に向かっていて。
彼女の自宅のインターフォンを押していた。
照のスキャンダルのタイミングに、メンバーの、
それも女性メンバーの自宅に行くのは
よくないのかもしれないけど。
インターフォンを押すと、返答はない。
だけど、自宅のオートロックが解除されたから
彼女がいることは確かだ。
久しぶりに来るけど、
しっかりと記憶している彼女の部屋に向かう。
自宅のインターフォンを再び押すとすぐに扉が開かれた。
「よっ。」
『なべくん、、、。』
「とりあえず上げてくんね？」
『うん。』
彼女の表情を見て、今日来て良かったと確信した。
泣きそうな、辛そうな彼女の顔は
あの時、、、風磨と別れた時とよく似てる。
部屋に入るとAは紅茶を淹れてくれる。
夜だからおそらくカフェインは入ってないだろう。
そういう気遣いをしっかりとする人だから。
「悪かったな。いきなり来て。」
『ううん。なべくんが来てくれて良かった。』
「お前、、、ちゃんと泣いた？」
そう聞いたら彼女は目に涙を溜めていて。
多分いろんなことを考えて
キャパオーバーしてるんだと思う。
「とりあえず、、、泣きなよ。」
そう言って、彼女の華奢な体を抱きしめたら小さな声で、
でも確かに嗚咽が聞こえる。
俺はしばらく抱きしめていた。
「大丈夫？」
『うん。なべくんごめん。汚れちゃった。』
俺が着ていたスウェットは彼女の涙で濡れている。
「気にすんな。」
『ありがとう。泣いたら少し落ち着いた。』
「そっか。」
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作者名：しょこら | 作成日時：2024年3月22日 1時
